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 第5回 食とコミュニケーションエッセイコンテスト
(FC-Science Award 2024)

 第5回食とコミュニケーションエッセイコンテストでは、「食」や「コミュニケーション」をテーマに、実話をもとに、実際に経験したこと、日頃思っていること、願いなど、当事者・家族・社会が笑顔になれるエッセイを募集いたしました。今回のコンテストでは、多くの方に「食」や「コミュニケーション」にご関心をお寄せいただき、感動的な作品を多く頂戴しました。ご応募くださったみなさま、誠にありがとうございました。  審査委員会による厳正なる審査が行われ、応募109作品の中から受賞作品が次のように決定いたしました。受賞されたみなさまには心からお祝い申し上げます。おめでとうございます。
 受賞されたみなさまをお迎えし、12月28日に高槻城公園芸術文化劇場(大阪府高槻市)にて表彰式および受賞祝賀会を執り行う予定でございます。現在感染症がまん延していることから規模を縮小し,感染管理をした上で開催させていただきます。短い時間ではございますが,その栄誉を称えたいと存じます。

◇第5回食とコミュニケーションエッセイコンテスト

 

受賞作品発表


最優秀賞 ◇
「お野菜くすり」 西川かつみ
優 秀 賞 ◇
「おじいちゃんの手羽先」 荒木洸佳
佳   作 ◇
「食のバリアフリー社会への切なる願い」 椿れもん

特 別 賞 ◇

「心のグルテンフリー」 かりん

「クッキーのある魔法」 緒方水花里

「ほろ苦プリン~母の笑顔添え~」 のんちゃん

「「美味しい」を届けることを放棄しない。これが私のできること。」 みなちゃん

「森のくまさん」 岬とうこ

「食と会話の相乗効果でアレルギー改善」 笑う希望

「春が来た!」 太田 ユミ子

「末っ子の願い」 遠藤有華

「溶けないアイスクリーム」 大山まさこ


第5回食とコミュニケーションエッセイコンテストに寄せて

食とコミュニケーションエッセイコンテスト審査委員会


 第5回食とコミュニケーションエッセイコンテストの審査を終了した今、審査員一同は改めて継続性の大切さを感じている。今回で第5回の節目となる本エッセイコンテストは、応募総数こそ109編とこれまでの中で決して多い数とは言えなかった。しかし、応募されたエッセイはどれも読み応えがあり、本コンテストが市民権を得てきた証であると確信せずにはいられなかった。応募者各位は、本コンテストの趣旨を十分に理解され、食やコミュニケーションの重要性を極めて明快に、かつ読者に寄り添ってきめ細やかに表現してくださった。応募者全員に深甚なる感謝を申し上げたい。

 審査委員会は、本エッセイコンテストの役割が2つあると理解している。1つは、世間でどうしても陽が当たらない食やコミュニケーションの障がいを社会に知らせることである。障がい当事者の思いはもちろん、家族を含む周りの変化や障がいそのものの描写を通じて、われわれが知らない世界を見せてくれている。大変な経験をしなくても本質を理解できることは極めて重要なことだと感じる。2つ目は、われわれが生活している場には絶えず食やコミュニケーションがあり、その大切さに気づかせてくれることである。例えば、母親がわが子にフーフーしながら熱いものを食べさせるという行為を想像して欲しい。これは、子育てや食の成長という範疇を超え、二人の心の通い合いすなわちコミュニケーション活動に他ならない。この経験を通じて互いの絆は深まり、いずれなくてはならない存在になるだろう。日々の忙しさゆえ気づかないことでも改めて感じさせてくれる、そんな役割が本エッセイコンテストには存在する。

 こういった大切な役割を本エッセイコンテストに感じつつ、審査員一同審査を行っている。これは他のエッセイコンテストでは味わえるものではない。それゆえ、文学的完成度と共に読者が何を感じ学ぶだろうかという点を含めて議論を重ねている。

 第5回食とコミュニケーションエッセイコンテストでは、審査の結果、『お野菜くすり』が最優秀賞に輝かれた。この作品は、50歳で娘を産んだ母親が記された物語である。内臓疾患を患い、長期保存した卵子から産まれた娘。これから幸せな生活が送れると思った矢先に、娘が重度のアトピーであることが分かった。いくつ病院を回っても有効な治療はなく、横になると痛がる娘を毎晩抱っこした。ある暖かい日、日向ぼっこしていると年配の男性が声をかけた。その出会いから、年配の男性が作った野菜をいただくようになり、娘のアトピーは徐々に治っていく。そして、母親の乳がんの発覚。読んでいると重い題材ではあるが、「お野菜くすり」と名付けた野菜、身近にある野菜が家族の未来を明るくしてくれる。希望が見える家族だと伝わってくる作品である。物語は食の内容かと思えるが、母と娘、男性と家族の想いなどコミュニケーションについて多くを教えてくれる。自身の周りには素晴らしいできごとが満載であることがよくわかる作品であり、多くの方々に読んでいただきたいと願う。

 優秀賞に輝かれた作品は、『おじいちゃんの手羽先』であった。この作品は、津軽に住むおじいちゃんと孫娘との話である。遠くに住んでいる孫娘。たまにやってくる孫娘をおじいちゃんはどんなに可愛く、愛おしいと感じただろう。孫娘が以前話した「手羽先が好き」ということばを忘れず、孫娘が遊びに来ると手羽先を自身で料理してそっと置く。自分は食べない。おじいちゃんには孫娘が手羽先を食べている姿がすばらしい栄養でありお土産だったのだろう。そんなおじいちゃんが徐々に料理が出来なくなり、手羽先は他のものに変わっていく。しかし、それでもおじいちゃんは孫娘にお土産を渡し続ける。やがて孫娘に家族ができ、おじいちゃんも病気が見つかりお別れの時が来る。「またね」、「またおいで」この短いことばの中に家族にしか通じないメッセージがあり、読者の感情がこみあげてくる。信頼しきった間柄だからこそ暗然とならず、人生最後の短い会話の中から「ありがとう」のメッセージが伝わってくるのだろう。この感覚をぜひ味わっていただきたい作品である。

 佳作には、「食のバリアフリー社会への切なる願い」が輝かれた。この作品は、「舌がん」が当事者の目線で克明に描写されている。よく聞く病名であるが、実際の治療や症状は当事者にしかわからない。治療中はもちろんのこと、治療によって発生する後遺症によって食に制限が出る。ただ、食べられるものはある。問題は、外食を含めて自身の個別性が社会生活にフィットできない課題だ。これを当事者本人が語ることで、読者は切実にそれを感じることができる。単に闘病記という範疇でなく、かといって専門書でもない。まさしくエッセイでしか表現できない作品である。自身の願い、同じ病気で闘っている人へのエールなど、専門書以上の情報を目にすることができる物語である。最後に作者が描かれた大切なメッセージを紹介したい。「奇跡的な回復で寛解状態になれた私には、天から与えられた私にしかできない使命がある。自らの経験を「言葉のご馳走」として発信し、食のバリアフリー社会を実現すること。そして「話す」に特化したパラリンピック的な大会を開催することだ。」素晴らしいではないか。人は誰もが生きる力を持っていると伝わってくる。心からエールを送りたい。自ずと自身の人生を振り返ることができる素晴らしい作品である。

 なお、本コンテストでは、9作品を特別賞として表彰させて頂くことにした。どれも秀作ばかりで皆さまに愛して欲しい作品である。受賞者の皆さまには心から敬意を表したい。

 本日はクリスマス。華やかでありつつ厳かな時間を過ごす人が多いだろう。審査委員会も素晴らしい作品と共に華やかかつ厳かな日々を過ごさせて頂いた。心から御礼申し上げたい。皆さまありがとう。応募者の皆さまには、これからも多くの人々に華やかで厳かな時間をプレゼントし続けて欲しいと願っている。


食とコミュニケーション研究所からメッセージ

 第5回食とコミュニケーションエッセイコンテストには109作品のご応募を頂戴しました。心から御礼申し上げます。受賞作品12編は、食とコミュニケーション研究所出版会から出版いたします。審査員諸氏には厳正な審査を行って頂き、改めて御礼申し上げます。

 食とコミュニケーションエッセイコンテスト受賞作品集は、
 「笑顔のかたち」として1~4を販売 しています。
 ぜひお手にとって頂きますようご案内申し上げます。
 みなさまのご多幸を心からお祈り申し上げます。

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