◇第4回食とコミュニケーションエッセイコンテスト
受賞作品発表
「食」や「コミュニケーション」をテーマに、実際に経験したこと、日頃思っていること、願いなど、当事者・家族・社会が笑顔になれるエッセイを募集いたしました。多くの方々に「食」や「コミュニケーション」にご関心をお寄せいただき、大変ありがたく思っております。ご応募くださったみなさま、誠にありがとうございました。審査委員会による厳正なる審査が行われ、応募総数143作品の中から受賞作品が次のように決定いたしました。受賞されましたみなさま、誠におめでとうございます。
受賞されたみなさまをお迎えし、2024年3月9日(土)に浜松市市民ギャラリー「ソラモ」で開催される第2回食とコミュニケーション健康フェア内で表彰式を執り行う予定でございます。受賞された皆さまの栄誉を称えたいと存じます。
やまもととみこ
カゲオ
湖春
特別賞
◇ 「味噌汁の<香り>がもたらすもの」福井正人
◇ 「ずっと特別な木曜日」
吉村さつき
◇ 「食べることは生きること、食べることは楽しむこと、食べることは幸せなこと」
のぶ42
◇ 「おいしい算数」
やすよ
◇ 「祈りのおにぎり」
のばたゆみ
◇ 「今日も給食がおいしい」
岡田博之
◇ 「私の口癖 ~生育不良のタマネギの活用~」
りな
◇ 「魔法」
竹本右近
第4回食とコミュニケーションエッセイコンテストに寄せて
食とコミュニケーションエッセイコンテスト審査委員会
第4回食とコミュニケーションエッセイコンテストの審査報告を記すにあたり、まず応募された皆様に深甚なる感謝を捧げたい。本コンテストでは、事実に基づいたエッセイを求めている。必然的にコンテストへの応募者は、自身や関係する人、経験された出来事を赤裸々に表現することになる。それ自体勇気がいることと審査員全員が理解している。勇気をもって執筆された本コンテストへの応募作品は、そのすべてが波瀾に富み社会にインパクトを与えるものであった。『これはフィクションなのではないか?』と思わせられるような審査員の経験の浅さを痛感する作品が多かった。まさしく、常識では考えられないことが起こるのが人生であり、社会なのであり,その中で懸命に活動を謳歌しているのが人々なのだとの理解に至らせてくださったことに改めて感謝申し上げたい。
その上で、一般社団法人 食とコミュニケーション研究所の理念である、「障がいを抱える人もそうでない人も、ひとり一人が笑顔になり、笑顔であふれる社会になること」を理解し、実現に向け表現したり努力されたりする姿には審査員一同感銘を受けた。食とコミュニケーション研究所の活動が世間に理解されている証であると応募作品からも感じた次第である。この点には、審査員一同からも研究所に敬意とエールを送りたい。
審査においては、文学的な完成度に加えて、「実際に経験したこと、日頃から思っていること、願いなど、当事者・家族・社会が笑顔になれる作品であること」の視点をも重視した。その視点こそが、本コンテストが行われる重要性であり、世に示す意味であると考えているからである。個々の特殊性が世間に一般化されることが、ダイバーシティ(多様性)構築に向かうことであると浅学である審査員諸氏も理解している。本コンテストは事実を通じてそのモデルを世間に示すことや、身近な小さな出来事が実は大切な事柄であることを皆で分かち合うことを大切にしたいとも考えている。
こうして審査が行われた中で,最優秀賞に輝かれた作品は『ソラの百パーセント』であった。すべての点で本コンテストのトップにふさわしい作品だった。この作品は、就職が厳しい発達障害のソラ君が農業を営む夫婦と出会い働くようになったことやそこでの出来事が描かれている。ソラ君が直売所で調理担当になるまで過程や、その後ソラ君のお母様から教わったお粥を、教えてくださったお母様亡くなったあと供えるまでに成長する様は圧巻である。夫婦が多様性を受け入れ、ソラ君の将来に向けて懸命に活動し、ソラ君もそれに応える姿を通じて、各々の生きざまの奥深さに触れられる作品である。大きなことはできなくても、個々には大切なことがありその達成も大きなことであると自身の生活を振り返させてくれる作品である。この作品を読みながら、国民がこのような気持ちになれば、もっともっと人を大切にする社会が到来するだろうと希望を持たせてくれる。ぜひ多くの皆さまに読んでいただきたい作品である。
優秀賞に輝かれた作品は『赤いおかずの正体は』であった。赤いおかずの正体が何であるかは読まれた人だけに与えられることとしてここでは内緒にしておく。本作品を読むと、食べ物には不思議な力があることや、人の心を動かすものであることに気づく。単においしいとか、栄養を摂るとか、楽しむということにとどまらず、家庭を垣間見られたり、コミュニケーションのツールであったり、多様な代物である。食とコミュニケーションの融合はあるのかな?と考えている皆さまがこの作品を読まれると、心揺さぶられる気持ちを通じて両者の関係性を理解することができると思う。
佳作に輝かれた作品は『幸運の運び手』であった。運動に自信があった女子中学生が病魔に侵された結果家庭科部へと転部する。そして何となく過ごした中学生時代。なんといった試練なのであろう。子どもたちが活発であって欲しいと誰もが願う中学生が「何となく過ごす」日々。切なすぎる。しかし、高校入学と同時に転機が訪れる。園芸部への入部だ。活発な指導者の下で多くのことにチャレンジする園芸部。既定概念とのミスマッチに読者から思わず笑みがこぼれるだろう。しかも,その園芸部は本物だった。主人公にはきっと今後大活躍が待っていることだろう。人生捨てたもんじゃない。ちょっとした出会い、考えの転換、目標の立て方,仲間の存在によって多くの豊かさを得られることを示してくださっている。壁に当たったとき、審査員も読んでみようと思える作品である。
なお、本コンテストでは、8作品を特別賞として表彰させて頂くことにした。どれも秀作ばかりで皆さまに愛して欲しい作品である。受賞者の皆さまには心から敬意を表したい。
明日はクリスマス。審査員は全ての応募作品から一足先に心の豊かさのプレゼントを頂いた。心から御礼申し上げたい。皆さまありがとう。応募者の皆さまには,これからも多くの人々に,心に残る豊かさのプレゼントを差し上げ続けて欲しいと願っている。
食とコミュニケーション研究所からメッセージ
第4回食とコミュニケーションエッセイコンテストには143作品のご応募を頂戴しました。心から御礼申し上げます。受賞作品11編は、食とコミュニケーション研究所出版会から出版いたします。 審査委員会のメンバー諸氏には厳正な審査を行って頂き、改めて御礼申し上げます。 食とコミュニケーションエッセイコンテスト受賞作品集は、販売しています。ぜひお手にとって頂きますようご案内申し上げます。みなさまのご多幸を心からお祈り申し上げます。