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プロジェクト

エッセイコンテスト

◇第2回 食とコミュニケーションエッセイコンテスト

受賞作品発表

「食」や「コミュニケーション」をテーマに、実際に経験したこと、日頃思っていること、願いなど、当事者・家族・社会が笑顔になれるエッセイを募集いたしました。昨年に引き続き多くの方に「食」や「コミュニケーション」にご関心をお寄せいただき、大変ありがたく思っております。ご応募くださったみなさま、誠にありがとうございました。
 審査委員会による厳正なる審査が行われ、応募総数337の中から受賞作品が次のように決定いたしました。受賞されましたみなさま、おめでとうございます。
 尚、大阪市内での表彰式を予定しておりましたが、新型コロナウイルス感染症感染拡大防止の観点から今年度も非開催とさせていただくこととなりました。受賞されたみなさまには、正賞と副賞を送らせていただきます。

最優秀賞 ◇ 最後の晩餐と私の願い  ( こまどり )
優 秀 賞 ◇ 父とグラタン     ( 磯野 桜 )
佳   作 ◇ 心のバリアフリー社会 ( 秋谷 進 )
特別賞
◇ 粥屋開業のためのキッチン修行物語( おじゃら りんご )
◇ 食事っておいしいんだ( あんず )
◇ 言葉がなくても( しおり )
◇ 柿じいちゃん( 大槻莉子 )
◇ 未来へのカレーライス( 感王寺美智子 )
◇ 黙って食うとったらうまいんじゃ( 大村素子 )
◇ おにぎりの向こうに見えるもの( 泉川 藻琴 )
◇ 腹をすかせたカナリアは( 長岡美幸 )

  ※ 受賞作品( 作者 )


第2回 食とコミュニケーションエッセイコンテスト審査に寄せて

食とコミュニケーションエッセイコンテスト審査委員会


 第2回食とコミュニケーション研究所エッセイコンテストの審査は困難を極めた。審査委員会として、まずこのことを報告したい。食とコミュニケーションエッセイコンテストは、2回目である。「第2回」でこれだけクオリティの高い作品が多数応募されたことに、審査委員一同感嘆した。これは、一般社団法人 食とコミュニケーション研究所の活動が広く国民から支持され共感されている、それに裏打ちされているのだろうと理解している。本当に素晴らしい作品ばかりだった。感動的な作品との出会いに『ありがとう』ということばが自然とこみあげてくる。そんな審査であったであったことを紹介したい。

「食とコミュニケーション」という極めて日常的な事柄に対して、作品を読み進めた審査委員たちは、全員が経験の少なさに自身を責めたようだ。本質的な視点の記述には誠と強みがある。それを感じた作品が実に多かった。食とコミュニケーションが人間の生活に深くかかわっていることを知り、審査委員も視野を拡げることができたと思っている。おそらく、現代でなければここまで赤裸々に描くことをしなかっただろうという、挑戦的な作品も多かったように思う。具体的に描写されて初めて気づくことも多いのだから、作者諸氏にはこれからも食とコミュニケーションを広く国民に伝え続けて欲しい。問い続けて欲しい。審査が終わった今はそんなことを想い、願う。同時に、食とコミュニケーション研究所の存在が、作品に込められた想いの基軸と感じている。

 あまり審査委員会の内情を知らせるのはよくないと先輩諸氏からご指導を頂く。しかし、今回の審査委員会はあえて内情を書きたくなる衝動に駆られてしまう。ご批判を承知であえて記すことにしたい。審査委員が熟読に熟読を重ねて各々意見をぶつけ合う。これが審査委員会の通常だ。第2回食とコミュニケーションエッセイコンテストはそれが数時間、数日続き結果的に結論が出ない。こんな不自然かつ非効率極まりない審査委員会はあっただろうか?そのくらい秀作がそろっているということだが、作品が与えてくれるメッセージが個性的であったこともその一因だったように思う。食とコミュニケーションは個人の価値観に依存する部分が多いという事実も知らしめてくれた。審査委員は自身の価値観とも向き合った審査であった。昨年もそうだったが、審査委員は読みながら、涙し、一緒に喜び、切なく、大笑いし、共感し、明日に希望を持つ、最後には生きる勇気を頂く、そんな審査だったと聞く。実にユニークな審査委員会だったと理解してもらえただろうか。そんな先が見えない議論の中から、なんとか3作品に絞り込んだというのが正確な記述だ。

 極めて秀作ぞろいの作品の中から最優秀賞として栄誉を得たのは「最後の晩餐と私の願い」であった。心から祝福したい。この作品は、パーキンソン病を患われたお母さまの介護を通じて、食の重要性を理解していくと同時に、育児に追われ十分にできなかった後悔が病院調理員へと導いたところから始まる。調理員として不治の病の方とのかかわりを通じて、人が最後に満たされるのは安心する記憶と同時にある食べたものやかけてもらったことばだということを訴えている。支援される経験の上に支援する側に立った主人公だからこそ感じたことなのかもしれない。今支援を受けておられる方々はそれだけで支援をする側の資質を積み上げているのかもしれないということに気づく作品だ。涙なくしては読めないほど感動する。感動作をぜひお読みいただきたい。優秀賞に輝かれた「父とグラタン」は、娘の出産時にレバーを買いに出かける父を描写している。父の心配が自転車のペダル漕ぎに間接的に映し出される。娘に対して父は気兼ねなのかあまり声をかけないものだ。でも、父の娘に対する愛情たるもの普通でない。もちろん、母も同じなのだが、父と娘というぎこちない関係性は微笑ましい。年に1回だけ、父が娘にふるまう料理がグラタンだ。娘を持つ方もそうでなくとも皆「自分のマイデッシュは何にしよう?」と、読み終えたとき思ってしまうだろう。そのワクワク感が心地よい。そんな作品である。ぜひ一読をお勧めしたい。佳作には「心のバリアフリー社会」が輝かれた。以前の呼び方「養護学級」であったいじめ問題。養護学級に通うお子さんをその他の子がいじめる。審査委員の私も見たことがある光景だ。そんなセンセーショナルな経験から、今児童精神科医として「健常者と障がい児との間にあるバリア」を取り除こうと努力する様に共感する。正確な描写に目の前で今何かが起こっているというように錯覚する作品だ。ユニバーサルデザインやインクルージョンという用語は、実は人の心に対して用いることばかもしれないと読者は理解されると思う。読みながら心拍数が高まることが抑えられない作品だ。これもぜひ読んでいただきたい。

 昨年もそうであったように、3作品のみを選ぶのは至難の業だということに加えて、審査委員会としてこのままお蔵入りさせてはいけないと思う作品が多数あった。今回も一般社団法人 食とコミュニケーション研究所に無理を申し「特別賞」を設定して頂いた。そして、8作品を推挙させて頂いた。どれも、多くの方々に読んで頂きたいと審査委員会は願っている。公表された要項と異なって恐縮ではあるが、今回も審査委員の願いを受け入れて頂ければ幸いである。

 今回の審査も多くを学んだ。これが本音である。実に気分がよい。そして、審査結果の発表日はクリスマスだ。幸福の誕生とともに、素晴らしい作品が世に誕生する日である。めでたい。多くの読者に幸せが降りそそぐだろう。審査委員は一足先に頂いた。ごちそうさまでした。



食とコミュニケーション研究所からメッセージ

 第2回食とコミュニケーションエッセイコンテストには多数のご応募を頂戴し、心から御礼申し上げます。受賞作品11編は、食とコミュニケーション研究所出版会から出版いたします。審査委員会のメンバー諸氏には厳正な審査を行って頂き、改めて御礼申し上げます。

 第1回食とコミュニケーションエッセイコンテスト受賞作品集は、販売しています
こちらもぜひお手にとって頂きますようご案内申し上げます。みなさまのご多幸をお祈り申し上げます。

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