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笑顔をつなぐ ~ 食とコミュニケーション ~

2020/09/16

「Don't Stop Me Now‼ 勢いをもって前へと進もう」

金谷栄養研究所所長 金谷節子先生


金谷先生のこれまでのご活動を教えてください。

~みなさんが喜んでくれたお茶ゼリー~
病院食事革命(1998年著書)。これが私の仕事としての原点です。昔から、病院での治療は、投薬を中心とした内科治療と手術を中心とした外科治療が主役でした。私は、食事が治療の一部となることを信じ、科学的に理論的に挑戦をしたいと思いました。食事を通じて治療するためには、患者さんに病院が提供する食事を食べて頂かなければなりません。患者さんにとって、食欲をそそり、食事を楽しみに、おいしく食べていただくこと。これが基本です。こうして「栄養」という側面から治療を担う栄養士として、実現する方法を常に考えてきました。
私が科長を務めていた聖隷三方原病院栄養科の良さは、パートさんも含めてみんな一人ひとりが主役。常に現場主義の考えで、その中で業務分析をして個別管理の栄養システムを取り入れたり、食器洗浄の仕事を分散したりしながら労働の価値を高めていきました。その中で生まれたのがお茶ゼリーです。飲み込むことがうまく行かず、誤嚥性肺炎を引き起こしてしまう恐れのある嚥下障害の患者さんに提供できるものは何か。嚥下障害について学び、お茶ゼリーを開発しました。お茶は抗酸化性が高く殺菌性もあることから、「万一誤嚥してもと思っても、積極的にリハビリテーションができます」と、みなさんが喜んでくれました。
 患者さんにとって何が必要か、それを実行するためにはどうしたらよいか、そう考えて実践してきました。このマインドは今もかわらず、現場の栄養士の皆さんも同じと思います。


~人生で重要なことはすばらしいと思える人に出会うこと~
 永田親義先生との出会いから「なぜ人は癌になるのか」という理論武装ができました。三石巌先生と出会い、三三大学で勉強会を実施し、量子力学からみた栄養を学びました。1983年には国立がんセンターの葛西宏先生が活性酸素のマーカーである8-OHdGを調べることにより生体での反応を栄養士の観点から見ることができるようになりました。また家森幸男先生から栄養を変えることによって遺伝子を変えることができるということを教わりました。
人との出会いによって世界が広がります。出会いは人の人生を変えて多くのことを生み出すもの。そう実感します。


~嚥下食(嚥下調整食)について~
 嚥下食は、生体を構成する成分で考えることが重要だとわかりました。つまりゲルであって、60%の水分をもったゲル、タンパク質が15~20%、そして脂肪が入り、糖質は1%でよい、生体構成成分に近いもので作れば嚥下食は飲み込みやすいのです。辛子明太子は重湯ゼリーで食べると美味しいですね。キャベツや白菜を刻んで煮なくても、白子や生牡蠣など美味しいものはいっぱいあります。普通食の食事を基準にして展開するとうまくいきません。嚥下食を食べる人は少ししか食べられないのだからもっとお金をかけてあげたらいいのです。お金が足りなければ卵を1個増やせばよい。栄養量もアップするし、オムライスなんてみんな大好物でしょう。
 その人のために食事を用意すること、それに尽きます。浜松のデイサービスでスタッフが「お寿司が食べたい」とご利用者に言われて嚥下食の握り寿司を作りました。そうしたら「こんな立派なものじゃなくていいの、お母さんが作ってくれるような五目寿司でいいの。」と。そこでその方々のお気持ちに気がついたことでしょう。それがまさにコミュニケーションです。
 そして、嚥下食の一番重要なところは香りです。香りを大切にした食事とコミュニケーションの取り方が大事、こういう時代だからこそ突破口を開いてもらいたいですね。


食とコミュニケーションを楽しむコツ、秘訣を教えてください。

 食もコミュニケーションも楽しむ秘訣は「発見」だと思います。今まで出会った多くの方々から発見をいただきましたが、尊敬する方達の共通点は、楽しくて楽しくてしょうがない、という印象です。星猛先生との出会いは咀嚼学会。ニコニコして風呂敷に本を包んでいらっしゃいました。多くの知識をお持ちの方々とのコミュニケーション経て発見につながるコツは、疑問に思ったことの答えに係るヒントを頂くことでしょうね。自分だけで発見することはそうそう簡単なことではありませんから。学術的宝庫の方々は純粋ですし、学問に対して真摯です。
その時のコミュニケーションでは「私はこのように思いますが、これはこういう解釈でよろしいでしょうか?」という聞き方をすること。そうすることによって、決して失礼にはならないし、相手にも真剣である印象を持っていただくことができます。私は、これを聞いたら人がどう思うか、ということは気にしません。「発見」があると食もコミュニケーションもより楽しくなります。最終的には真理の探究、これが大切だと信じています。それが一番楽しいことではないでしょうか。


食とコミュニケーションに関する夢を教えてください。

 コロナ禍により、がんの患者さん、重症な患者さんは面会謝絶になっています。そういう状況の中でも、SNSを利用して厳しい状態にいる人たちとコミュニケーションを図ることが、今の私の仕事です。死を身近に感じ人生のどん底を歩んでいる人たちのために、私自身に何かできる訳ではないけれど、いろいろな経験をしてきた人間がやれることのひとつとして、そういう人たちへのお手伝いができればいいと思っています。


~食とコミュニケーションについて、栄養士へのメッセージ~
 新型コロナウィルス感染症を万一羅患した場合でも、重症化させないためには、良い栄養状態の身体を作ることです。一番初期の段階でウイルスと戦うのはホエイタンパク、ビタミンD₃、活性酸素消去能の御三家は銅、亜鉛、セレンです。そして緑茶カテキンには抗ウイルス作用があります。食事なら誰の規制もなくできます。栄養士は今こそ活躍しなければなりません。
食事の重要性の中には2つの要素があると言い続けてきました。1つは「60兆個の細胞の環境を整えること」、2つ目は「今日生きていて良かったと思えること」。眼の前におられる方がこれでよし、最期のワンスプーンでよし、そう思えるにはコミュニケーション力が必要です。
患者さんや高齢者の立場に立って考えられる、そういうスキルを身につけることがものすごく重要ではないかと思います。まず聴くということ、仕えるという姿勢、それは患者さんだけでなく誰に対してもそうです。コミュニケーションがコロナ禍でパンクしているので、この中でどうしていくか。インターネットを使ったやり方をしていくのもよいでしょう。客観的にものを見ることができるインターネットの良さを生かして展開していけばよい、そういう時代に入ってきています。ただ、食は実際に食べてみないとわかりません。自分に投資して美味しいものを食べて自分を鍛えることも大事ですね。
Don’t Stop Me Nowの精神で勢いをもって進みましょう!



金谷節子先生

金谷栄養研究所所長 管理栄養士 健康運動指導士

ご略歴
1972年 聖隷三方原病院栄養科、1979聖隷三方原病院栄養科長、2004年聖隷佐倉市民病院栄養科長、2005年常葉大学 健康プロデュース学部健康栄養学科 准教授、2006(財)日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)全日本女子バレーボールチーム栄養サポート、2010年常葉大学健康プロデュース学部健康栄養学科 教授、2013年金谷栄養研究所 所長。専門分野は臨床栄養学。研究テーマは、高齢者栄養、抗酸化ストレス臨床試験、緑茶研究、嚥下食ピラミッド、栄養と医療経済研究、スポーツ栄養研究、アンチオキシダントクッキング(真空調理法)。食事を通じた疾病治療に力を注ぎ、臨床栄養学の発展に貢献した。学術活動は、日本病態栄養学会常任理事、日本抗加齢医学会評議員、日本摂食嚥下リハビリテーション学会評議員、日本臨床栄養学会評議員など。

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