トップページ研修会嚥下食調理技能者講習会第1回講習会

第1回 嚥下食調理技能者講習会終了報告

 2022年度嚥下食調理技能者講習会(第1期)が終了いたしました.
 本講習会は,『嚥下食調理技能者』の育成を目的に実施いたしました.現在,嚥下食の基準化が官民各団体によって示されています.基準を理解し,基準に則った調理することができて,はじめて基準化が意味を持ちます.同時に,理論と調理技能の両者を持ち合わせた人を育成することは,嚥下障害で苦しんでいらっしゃる方々に食への希望を与え生きる喜びを得えて頂くことに繋がると考えています.
 本講習会では,講義4講座(各回80分)を受講して頂き,「ヒトが食べること」,「食科学」,「嚥下障害」,「支援方法」,「嚥下食の物性」,「誤嚥・窒息のリスク」,「嚥下食調理技法と理論」などの理論を学んで頂きました.その後,実技講習を2講座(各回120分)と総合討論1講座(60分)で調理技能を高めて頂きました.実技講習では,お茶ゼリー,果汁ゼリー,重湯ゼリー,嚥下寿司,嚥下おはぎ,ハンバーグ,野菜のポタージュ等の調理を基本から学びました.野菜ポタージュでは,とろみ調整食品を使用しなくても,とろみがしっかりつく方法を経験して頂きました.受講者には,味,香り,色,見た目で食欲をそそり,かつ物性が嚥下食の範囲に入る調理法を体得して頂きました.講習会の最後には,全受講者に当研究所代表理事から修了証をお渡しし,各講師からメッセージが贈られました.
 本講習会には全国から多職種のみなさまが大勢ご参加くださいました.本紙面をお借りして,御礼申し上げます.ありがとうございました.今後,嚥下障害の方々の支援にご活躍されることを心から期待しています.

一般社団法人 食とコミュニケーション研究所 

第1回 嚥下食調理技能者講習会に参加して

言語聴覚士 八田 理絵 

 今回、一般社団法人 食とコミュニケーション研究所の「嚥下食調理技能者講習会」に参加させていただきました。オンライン2回、実技講習1回を金谷栄養研究所所長 金谷節子先生、聖隷クリストファー大学教授 柴本勇先生に教えていただけるという大変貴重な体験でした。
 今回の講習に参加させていただいて、先生方のお話に心から感銘しました。
 私の人生を大きく変えたと言っても過言ではない程の3日間でした。全ては書ききれないので、3つに絞ってお伝えします。
 一つ目は、金谷先生の提供されている嚥下食は、一人一人の嚥下障害の方とご家族との関わりから学び生まれたものだということ。本当に美味しくて喜ばれるものばかりでした。私が中でも特に好きだと思ったのが、「スイカゼリー」でした。つい、「おかわりはないですか?」と聞いてしまった位です。人気があるのには理由がある、と納得しました。ミキサーにかけると本来のスイカの風味にならないとのことで、押し潰して絞ること、色と香りを保持するために、トレハロースを使うことを教えていただきました。
 二つ目は、嚥下食を作るポイントとしては、「嗅覚刺激」の重要さを自覚できたことです。
 嗅覚刺激は大切であるということは頭では理解していたつもりでいましたが、嚥下食を作る際には、「見た目」「味」に目がいきがちであった自分に気付かされました。
 “嗅覚は五感の中で唯一、新皮質を経由せず感情と記憶を司る大脳辺縁系に直結している。”と教えていただいたものの、「でも。どうやったら香りが出せるものが作れるのだろう。」と思ってしまいました。ポイントは、「真空調理法」という調理方法で、他にもゼリーを作る過程であれば、一度に全てを加熱しないという点(全部を加熱すると香りも色も劣化)にあると教わりました。本当にこの事を知る事が出来て参考になりました。色々作ってみて実践していきたいと思いました。
 最後に「人参ポタージュ」についてご紹介します。こちらは蒸した人参や生クリーム等の材料をミキサーにかけたお品でした。ミキサーにかけただけですが、飲み込みがしやすいポタージュでした。ついつい何にでもトロミ調整食品を入れてしまっていないかという点に気付かされました。
 今回とても貴重な講習会に参加出来て、本当に参考になることばかりでした。そして何より学ぶことも作ることもとても楽しくて、嚥下食をほとんど作った事がない私でも、不安になる事がなく取り組めました。
 家で実際にもう一度作っていきます。そして、在宅で暮らす嚥下障害の方とご家族に合わせて無理なく出来る工夫をお伝え出来るように、今後もお家での暮らしをサポートしていけるように精進したいと思います。本当に貴重な3日間でした。ありがとうございました。

第1回 嚥下食調理技能者講習会

嚥下食調理技能者講習会

 一般社団法人 食とコミュニケーション研究所は,2022年度から嚥下食調理技能者講習会を開始することになりました.わが国では,『食べられなくなったら人生終わり』という時代から,『食べにくくなっても,食べやすいものを選び,食べるリハビリテーションをして長き人生を食と共に全うする』時代へと変わりました.同時に,高齢者や摂食嚥下障害者の食のQOLが飛躍的に高まりました.企業の取り組みも活発でそれを後押ししています.
 国も各学会も摂食嚥下障害の方がより良い食生活を過ごすことができるように,各種基準を策定しています.各基準作成によって,どのような食物をどのように提供すればよいかがわかってきました.
以下に示すように具体的な基準が学会や国から基準化されています.


嚥下調整食学会分類2021(Japanese Dysphagia Diet 2021)
出典:日摂食嚥下リハ会誌25(2):135–149, 2021




嚥下食ピラミッド
出典:https://www.engesyoku.com/kiso/kiso06.html


しかし,嚥下食(嚥下調整食)を理解し適切に調理できる人材が不足しています.嚥下食を調理できる人材育成が急務です.
不足している理由は,嚥下食(嚥下調整食)は,物性・味・温度管理・水分量・油脂など病態を理解しながら適切な食物を調理することが求められるからです.単に,ミキサーにかけたりつぶせばよいという調理とは異なるからです.

食とコミュニケーション研究所では,『嚥下食調理技能者』を育成することを目的に,講習会を開催します.

『嚥下食調理技能者』とは?

 一般社団法人 食とコミュニケーション研究所では,嚥下食調理技能者を「摂食嚥下障害の基礎知識,病態,評価,リハビリテーションを理解した上で,摂食嚥下障害の方に安全で美味しく適切な嚥下食を安心して提供できる調理技能を有した方」と定義しています.

◇講習会の目的
 嚥下食調理技能者を育成する.

◇到達目標
 嚥下食の段階を理解し,基本の調理の加工ができるようになる.

◇到達知識・技能レベル
(1) 摂食嚥下障害および嚥下食について説明できる.
(2) 嚥下食の段階を理解し調理の基本を実践できる.
(3) 調理器具の特性を知り,嚥下食の加工に使用することができる.
(4) 増粘剤やゲル化剤などの特徴を理解し,使い分けることができる.
(5) 嚥下食に適切な食材の選択をし,調理加工することができる.

◇講師陣
 金谷節子先生,柴本 勇先生,岩品有香先生,桒原理江先生

講師紹介

金谷節子先生 管理栄養士
 金谷栄養研究所 所長
 聖隷三方原病院栄養科長として,嚥下食の確立に尽力した.
 病院給食に真空調理を採用し病院でのフルセレクトメニューを全国に先駆けて実現した.
 病態栄養学を通じて栄養を科学的に探究している.
 「嚥下食メニューコンテスト」 審査委員長
 「介護食品・スマイルケア食コンクール」審査委員長
 「嚥下食レシピ大賞」特別審査員

柴本 勇先生 言語聴覚士
 聖隷クリストファー大学 教授
 聖隷嚥下チームの一員として,嚥下食の確立に貢献した.
 豊富な臨床経験に裏打ちされた,摂食嚥下リハビリテーションの専門家.
 「認定言語聴覚士(摂食・嚥下領域)」
 「日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士」
 「日本嚥下医学会 嚥下相談員」
 「嚥下食メニューコンテスト」審査委員
 
岩品有香先生 管理栄養士
 聖隷三方原病院 ホスピス担当
 高齢者福祉施設で栄養マネジメントや新調理システムを取り入れた食事提供を実践
 健康保険組合関連施設にて糖尿病重症化予防プログラムや健康増進セミナーでの講師担当
 嚥下食コンテスト事務局での調理担当
 
桒原理江先生 管理栄養士・ケアマネジャー
 機能強化型認定栄養ケア・ステーションちょぼ 栄養相談所 所長
 病院や福祉施設での栄養ケアマネジメントを経て,
 2020年に元気な地域住民をサポートすることを目標に
 機能強化型認定栄養ケア・ステーションを立ち上げる.
 地域住民の食事や栄養相談に活躍中.
 

講師陣が調理した嚥下食の例

(すべて摂食嚥下障害の方々に召し上がって頂けます)

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