トップページレポートコラム嚥下食調理の達人を増やしたい

2022/04/18

「嚥下食調理の達人を増やしたい」

奈良セントラル病院 後藤栄子


 食べる楽しみとは、人生の営みの中で味わう事が出来る、もっとも大切な感覚の一つではないでしょうか。それは嚥下に難しさを抱える方も、そうでない方も、何ら違いはなく、生涯にわたって感じる事が出来るものです。

 嚥下障害という、食べることに難しさが生じたとき、食べるという行為から楽しみの要素が薄まり、生きるために必要な行為となっていく現状があります。
 病院、老健施設、デイサービスなどでは、必要に応じて、嚥下食が提供されます。嚥下食のお膳は、通常、食べる人にとって、ワクワクとした楽しみをもたらす物では残念ながらありません。
 嚥下食に携わっている方々は、日々、様々なジレンマを抱えながらも、懸命に努力しておられます。しかしながら、安全性に焦点を当てる事が最優先とされるため、それ以外の要素に関しては、致し方ないと諦めに甘んじているのが現状であると思います。見た目…味…楽しみとしての要素は少ないけれど、嚥下食とはそういう物だと。

 そういったなかでも、もしも、自分でも食べたくなるような、食べる人が思わず笑顔になるような嚥下食が作れるとしたら、いかがでしょうか。
 機会があればそういう嚥下食の作り方を学んでみたい、技術を身に付けたいとお考えの方は多くおられると思います。5月の金谷先生のセミナーは、そういった志をお待ちの方にとって、願ってもない貴重な機会であると思います。

 また、嚥下障害の方がおられるご家庭にとっても、食事作りは、毎日が心の葛藤の連続でいらっしゃると思います。
 以前、施設ご利用者の家族の方の呟きをお聞きしました。
 せっかく頑張って作ったのに、「皆んなと同じ物が食べたいのに自分だけこんなドロドロな物しか作ってくれない、へんな粉みたいなものを入れられて、人に見られたら怪しい薬を混ぜてると思われる!」と言われて困っている…。
 ご家族の為に嚥下食を作る方も、本当は、食べる事が大好きなご家族へ、美味しい物を作ってあげたい。作るご自身も気持ちがワクワクするような美しく盛り付けた食事を作りたい。安心して食べられる食べやすい食事を作りたい、そんな風に願っておられると思います。
 必要な情報、知識を、それを本当に必要としておられる方々へお届けしたいと、私達は活動しております。

 このひと口を、美味しいと感じてくださいますように…食べることが楽しみであり続ける事が出来ますように…私たち嚥下障害のリハビリに携わる者の、願いです。


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