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2021/03/22

「フレイル予防と口腔運動」

聖隷クリストファー大学 柴本 勇


 2020年にフレイルと口腔運動についての貴重な論文が発表されました.
 Shimazaki Y., Nonoyama T., Tsushita K., Arai H., Matsushita K., Uchibori N.: Oral hypofunction and its association with frailty in community‐dwelling older people. Geriatr Gerontol Int; 20: 917–926, 2020.
 本論文では,65歳~85歳の978名を調査し,フレイルの状態と口腔機能の関係を検討しています.調査対象者を,非フレイル群,プレフレイル群,フレイル群の3群にフレイルチェックリストを用いて分類し,それぞれの群で口腔機能を横断的に調査しました.その結果,60%で口腔機能低下を認め,プレフレイル群とフレイル群では非フレイル群よりも咬合力と口腔運動繰り返し回数,嚥下能力が有意に低下していたと報告しています.これらの結果から,フレイルと口腔機能には関連性があると結論づけています.
 本研究で調査された口腔機能に関する項目は,口腔衛生,口腔内水分量,咬合力,口腔運動繰り返し回数,舌圧,咀嚼能力,嚥下機能の7項目でした.このうち本研究の大規模調査の結果前述の3項目がフレイル群で有意に低下していた結果となりました.7項目については,2016年に日本老年歯科医学会が定義した「口腔機能低下症」の診断基準に含まれる項目と同じです.「口腔機能低下症」の診断基準では,7項目中3項目以上で基準より低下している場合に診断されます.また,2018年4月には口腔機能低下症に係る検査料と管理料が医療保険に収載されました.
 わが国では,高齢者が増加し健康年齢を高くすることが望まれ,口腔機能を高めることが四肢の運動機能や認知機能と同様に注目されています.とりわけ,疾病予備軍とされるフレイルの予防は重要で,その予防方法も注視されています.同様に,サルコペニアの予防も重要視されています.サルコペニア・フレイルの予防では,筋量や筋力を保つことが大切との考えがあり,筋力や筋量を高めることが行われてきました.
 前述の2020年に発表された論文では,咬合力は筋力と関係性がありますが,舌口腔運動については舌圧ではなく口腔運動繰り返し回数が有意な差を認めたとの結果でした,すなわち,舌口腔運動については,単純に舌圧を高めることに加え,巧緻性の向上を含めた運動性の向上が重要との示唆であると思われました.この結果は,言語聴覚士等口腔領域のリハビリテーションに関わる専門職にとっては大切な示唆です.
 一般の方々におかれましても,舌口腔運動については筋力と巧緻運動を共に普段から鍛えることが推奨されます.口腔運動繰り返し回数を多くするには,分離運動を含めた巧緻運動と筋力の両方が必要です.口腔運動のトレーニングにはこれらの視点が重要です.
 本研究会ホームページには,上記論文で示された知見をもとに当研究所で作成しました,「フレイル予防ストロー体操」のパンフレットを掲載しています.科学に裏付けされた知見をもとに,手に入りやすいストローを用いて体操を立案しています.ぜひ参考頂き,日々健康にお過ごしください.

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