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2020/08/12

「感染と栄養の関係」

認定栄養ケア・ステーションちょぼ 栄養相談所 桒原理江


 私たちの身体は自身では認知しないところで、細菌やウイルスと闘っています。 これを生体防御と呼んでいます。私たちには生体防御の機能が備わっているため容易に感染症を引き起こさずに過ごすことができています。

▶生体防御とは
 生体防御の方法は2種類あります(表1)。第一は、皮膚・くしゃみ・咳など、体内に細菌やウイルスが侵入するのを防ぐ物理的・化学的防御です。第二は、体内に侵入した細菌やウイルスを体から排除する免疫機能です。

表1 生体防御機構

生体防御方法 具体的活動 機能を保つために
物理・化学的防御 皮膚・くしゃみ・咳など、体内に細菌やウイルスが侵入するのを防ぐ ・皮膚がしっかりしている
・くしゃみや咳ができるように呼吸する筋がしっかりしていること
・呼吸機能を年齢相応にしておくこと
免疫機能 マクロファージ・好中球・B細胞・T細胞など ・栄養・休養・睡眠を適度にとって、免疫機能を下げないこと
・基礎疾患があれば、その疾患の情報を理解しておくこと
・治療中の方は、治療行為が免疫機能を低下させるものかを情報収集しておくこと

 例えば、インフルエンザウイルスが体内へ侵入してきた場合、まず咳やくしゃみで排出します。それでも、体内に侵入した場合様々な細胞が活動し、細菌やウイルスを排除します。免疫細胞が優位になると、保菌していたとしても発症しなかったり、軽症ですんだりします。 また、免疫機能は一度感染した異物の情報を記憶し、一度羅患した感染症には発症しにくいという機能も備わっています。これは抗体の生成と呼ばれています。

▶免疫機能が低下すると
 感染症にかかりやすくなったり、傷が治りにくかったり、がん細胞を攻撃できず発症リスクがあがったり、新陳代謝が下がり肌荒れしたり、疲労回復が遅くなったりします。 免疫機能は様々な生活習慣の影響を受けます。ストレス、疲労、飲酒、喫煙、栄養不良は抵抗力を下げる可能性があります。

表2 免疫機能を下げる要因


【生活習慣由来】
 ストレス、疲労、飲酒、喫煙、栄養不良(不足・偏り)、運動不足、外気や日光浴不足
【医原性由来】
 免疫抑制剤等の投薬、放射線治療


▶自己免疫力を高めるためにできること
 必要な栄養をしっかり摂って、適度な運動をして、充分な睡眠をとり、健康な身体でいることが、自分の免疫システムを機能させ感染予防率を高めることに繋がるといわれています。免疫システムが機能し抵抗力が高まり、 さらに運動することで体力がつき感染予防率も高められます。

▶感染予防対策とは?何をすればいい?
 自己免疫システムを常に高めておくことはまず大切なことです。しかし、すべての細菌やウイルスに対して必ず自己免疫力があがるともいえないのが人間の難しいところです。日々細菌やウイルスから自己防衛している身体のために、免疫細胞が過ごしやすいような環境の身体でいることが大切です。この状態が真の健康といえるのかもしれません。

▶感染症を羅患する前に考えておきたいこと
 栄養不良はウイルスの感染リスクを高め、すでに感染してしまった人の回復を遅らせる危険があります。発熱時は、身体には大きな負担がかかり通常より、より多くのエネルギーや栄養素を必要とします。もちろん水分も多く必要となります。
 感染症に羅患した際は、多くのエネルギーを摂り、多種の栄養素を摂ることが基本です。ただし、感染症に羅患すると極端に食欲が低下します。少ない量でも、高エネルギー・多様な栄養素が含まれている食品を摂ることが大切です。水分も一度に多く摂取できませんから、少量頻回を基本とします。
 日々健康的な食事生活をすることは非常に重要だといわれていますが、直接的に感染を防ぐことのできる食品や栄養素はありません。しかし、自己免疫システムを自身でサポートするためには、健康的な食生活を維持することが重要です。

▶普段から知っておきたい知識
 栄養の摂取が過不足になると免疫システムが機能しにくくなり、ウイルスに対する抵抗力は低下します。たとえば、エネルギー・タンパク質欠乏症(PEM)により免疫能は低下し、高齢者では、やせや血清アルブミン値の低下により、インフルエンザワクチン接種後の抗体陽性率は著しく低下し、感染予防率も低下することが解っています。また、各種のビタミンは、各種の代謝を営む補酵素として働くことから、これらが欠乏すると免疫能を担う細胞の機能低下を招きます。ミネラルの欠乏は、胸腺の形成不全や抗体となる免疫グロブリンのレベルを低下させます。一方、肥満や糖尿病等の過剰栄養も免疫能の低下を誘発します。
 従って、免疫能を維持するには、栄養バランスの取れた食事により、免疫システムの正常な機能を維持する各種の栄養素関連物質が適正に摂取されること、つまり、栄養不良を起こさないようにすることが第一に必要になります。栄養のバランスが崩れ、免疫能が低下している人には、食事改善により、免疫能を回復することが可能になります。

▶感染症対策と食事
 国連食糧農業機関(FAO)より、感染症対策として以下のことが推奨されています。

★果物や野菜を沢山食べましょう。
 新鮮な果物や野菜からは、健康な食事に必要な食物繊維だけでなく、多くのビタミンやミネラルを摂取することができます。買い物の回数を減らす必要があれば、冷凍品や缶詰も良いでしょう。これらの果物や野菜にも、ビタミンやミネラルが含まれています。ただし、これらの食品には、製品を加工する際に、砂糖、塩、または添加物などを加える場合がありますので、食品表示をよく見ることをお勧めします。
注:腎臓病などの食事療法を実施されている方は、指導されていることを優先してください。

★全粒穀物、種実類および健康的な油脂が豊富に含まれる食事を摂りましょう。
 健康的な油脂とは、オリーブ油・ゴマ油・ピーナッツ油又はその他の油で不飽和脂肪酸が多く含まれているものです。このような食事は、免疫システムを助けて炎症を抑えることが期待できます。

★ 脂質、砂糖、塩の摂取量に注意しましょう。
 多くの人は食べ物でストレスを癒しますが、それによって食品の過剰摂取につながる可能性があります。さらに、私たちが癒されると感じる食品は脂質、糖質、食塩が多く、エネルギーが高いものを、大変美味しいと感じることがありますので、これらの成分をとりすぎないようにしましょう。繰り返しになりますが、これらの成分を制限できるという点においても、食品表示は役立ちます。

★食品の衛生状態を良好に維持しましょう。
 皆さんはCOVID-19パンデミックにより、食品の安全性を心配しているかもしれませんが、COVID-19は呼吸器系ウイルスであり、食中毒ではありません。購入した食品に触れることで、感染が拡大するという証拠はありません。ただし、次の食品安全の5つのポイントを実践することで、食品の安全を確保できることを覚えておくと良いでしょう。
(1)清潔に保つ
(2)生鮮食品と調理済み食品を分ける
(3)調理時はしっかり火を通す
(4)食品を安全な温度に保つ
(5)安全な水と生鮮食品を使用する


▶参考文献
・国際連合食糧農業機関(FAO) https://www.unic.or.jp/info/un_agencies_japan/fao/
・日本栄養士会ホームページ参照 https://www.dietitian.or.jp/

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